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代表世話人挨拶

 普及と実装(D&I)科学の歴史は、1992年にD&Iの創始者の一人、Glasgow 教授が職域禁煙プログラムの実装に関する研究を発表した辺りにまで遡ります。そこから10年余りかけてRE-AIMという実装の客観的な評価指標が開発されました。2005年には、米国NIHが実装科学の研究公募を本格的に開始し、2006年には“Implementation Science”という科学雑誌が創刊され、2007年には、D&Iカンファレンス(ベセスダ)が開催されました。そして、この度、わが国で、2018年11月18日、普及と実装科学研究会 第1回学術集会(東京)を開催することができ、Research Association for Dissemination and Implementation Science in Health:RADISHが発足しました。 

 欧米のD&I科学研究は、がんや精神疾患、循環器、糖尿病、呼吸器領域を中心に花が開いておりますが、近年、米国国立がん研究所のCancer Moonshot計画の重要課題に取り上げられ、リンチ症候群への対処やパネル検査などを用いた医療:プレシジョンメディシンの急速なスケールアップを推進するためにD&I研究を活用することが謳われています。同時に、がんの副作用対策をはじめ、緩和ケアや心のケアも、プレシジョンケアのD&Iとして触れられています。こうしたD&Iというイノベーションを可能にしたのは、目覚しい技術革新のおかげであり、スマートフォンなどによるアクセス向上、電子化データによるビッグデータ利用が拍車をかけています。

 一方でD&I研究を興味深く特徴付けている点はDe-implementationという概念です。漫然と行われている無駄な医療、場合によっては有害な検査をきちんと評価して中止したり、より効果のある効率的なケアに変更させることもこの科学領域の重要な役割であると考えています。

 最後になりますが、D&I科学研究会のRADISHにはラテン語の「根」を意味する"radix"に語源があります。この名称には、エビデンスがしっかりとプラクティスに根付くことを目指すという、発起人、関係者の願いが込められています。RADISHは、皆さんと協働して、保健・医療・福祉の改善、研究の推進、人材の育成、情報交換を図り、すべての人々の健康と豊かな社会の構築を目指します!

2019年3月

RADISH:普及と実装科学研究会

代表 内富庸介